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はじめに
2009年12月,閣議決定により障害者福祉制度改革に関する法的位置づけを持った議論の場(障がい者施制度革推進本部,障がい者制度改革推進会議,総合福祉部会)が設置されました.単に障害者自立支援法(以下,自立支援法)の修正ではなく,国連の「障害者の権利条約」批准を念頭においた,自立支援法に代わる新たな法的整備に向けた検討を行っています.また,障害者福祉の基本的理念や施策の基本事項,国,地方公共団体の責務について規定した「障害者基本法」の見直しや差別禁止法制定等の議論も行われ,障害者支援に関する全体の改革を図るための作業が進められています.
現在,おおよその作業スケジュールが示され,検討課題の整理が進められています.一部の課題については推進会議や福祉部会ごとに具体的検討が行われ,それらの整合性を保つための合同検討会も設置されつつある状況です.しかし,まだ具体的な改革の内容については示されていません.
また,自立支援法自体については,ご存じの通り利用者負担,支給決定方法,対象者の範囲等様々な課題があります.自立支援法は施行後3年で見直しを行うことが付帯事項に定められていますが,現状では抜本的な改正は行われていません.ただし,法律施行の翌年(2009年度)から見直しまでの間,円滑な運営を図るための改善策として,利用者負担額の減免*や新制度への移行による事業者収入等の激変緩和措置,新制度のサービス体系へ移行する際の建物整備等の準備支援措置について,予算化や細かな報酬単価の改正等が行われています.
本稿では,このような障害者制度改革に向けた動向や議論の概要を通して,障害者の自立支援の現状と課題について皆さんと情報共有を図るとともに,障害者がその人らしく地域で暮らしていくために,どのような仕組みや考え方が必要なのかを議論するための1つのきっかけになればと思います.
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