特集 症例検討―脳血管障害患者を多側面から診る
脳血管障害患者に対する回復期理学療法
池田 裕
1
Yutaka Ikeda
1
1聖稜リハビリテーション病院リハビリテーション部
pp.955-962
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101794
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はじめに
近年,対象患者や医療環境の変化はめまぐるしく,多側面からの評価・治療の必要性が増している.そのために一番有効なのは国際生活機能分類(ICF)の概念に基づいた評価・治療である.ICFでは心身機能や活動をバラバラに捉えるのではなく,生活機能(参加,活動,心身機能)を構造的に捉え,それに影響を与える健康状態や背景因子(環境因子,個人因子)も階層的に捉えることで複雑な構造をもつ患者を体系化していく.理学療法場面でもICFモデルにより対象者を構造化することで,神経系,骨関節系,内部障害系など各専門分野の評価も効果的に活用でき,より具体的で多面的な治療が可能となる.
脳血管障害患者の理学療法でも神経系を中心とした評価・治療だけでなく,骨関節系や内部障害系へ配慮した対応の必要性は増している.特に回復期は安静状態を脱し活動が許可され始める時期であり,リスクコントロールのもと機能改善を図りながら基本動作や歩行能力,セルフケア,家事動作,その他趣味活動,仕事などの可能性を見極め,その後の生活を一緒に考えながらリハビリテーション(以下,リハ)を行う重要な時期である.この時期にQOLを効率よく向上させるためには,多側面から患者を捉え,能力向上と機能改善をどれだけ具体的に結びつけられるかがポイントである.
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