臨床実習サブノート 臨床実習に不可欠な基本的技能・7
運動療法の組み立て方(5)大腿骨頸部・転子部骨折―高齢者の転倒が受傷機転の場合
内 昌之
1
Masayuki Uchi
1
1東邦大学医療センター大森病院
pp.921-926
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101786
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はじめに
大腿骨頸部・転子部骨折は高齢者の屋内での転倒による受傷が多く,いわゆる寝たきりの原因として上位に位置する深刻な社会的問題でもある1).受傷原因は,加齢に伴う脊柱の変形による重心の前方移動,股関節・膝関節屈曲位による歩行,立ち直り反応の低下と防御的な筋収縮の不足,骨密度の低下など,多くの危険因子が関わっている2).離床が遅延すると,歩行能力低下のみならず起居動作や呼吸循環器系の不均衡を生じ,生命予後にも影響するため,早期離床を念頭に治療が進められる.本外傷後の理学療法を行う際には,医学的治療経過はもとより,転倒に至った経緯と要因を理解し,退院後の住環境・家庭環境を考慮したゴール設定を検討する必要がある.本稿では,高齢者の転倒に起因する典型的な大腿骨頸部・転子部骨折に対する内固定術後の症例をモデルに,対象者の理解と運動療法の組み立て方について概説する.
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