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はじめに
以前,筆者が勤務していた総合病院で理学療法業務の内訳を調査したところ,起居動作練習の頻度は歩行練習の次に割合が大きい第4位(1位は関節可動域練習,2位は筋力強化練習)であった.ところが在宅理学療法を始めてみると,最も高頻度に練習や助言,家族指導を実施しているのは起居動作であった.その理由は①最も利用者・家族を困らせる課題であるから,②動作そのものに運動の基本要素が含まれているから,③比較的安全に(自主練習としても)実施できるから,④廃用症候群予防の第一歩だから(廃用症候群予防の最大のポイントである寝食分離のために,起居動作は避けて通れない)であり,在宅理学療法を遂行するうえで最も重要な動作であると言える.
吉良ら1)は,在宅理学療法における理学療法士の滞在時間は平均43.8分,訪問頻度は7割以上が週1回と調査内容を報告している.この現状から推察すると,在宅理学療法では利用者への直接的なアプローチ時間は限られているため,起居動作を習熟させ日常の活動時間や離床時間の向上を促進することに重点を置かざるを得ないことがうかがえる.このことは,われわれのcluster randomization trialによる訪問リハビリテーションの介入結果が,介入群で有意に離床時間の延長を認めた2)ことと方向性が一致している.要するに,在宅理学療法の現場では一般的に,離床に向けた起居動作の練習を大きな柱として行っているということが推測できる.
本稿では,在宅理学療法において家族などの背景を踏まえながら多くの問題を解決しつつ最適な方向へ導く効果的なプランニングと展開について,特に身体機能と起居動作の関係に焦点を当てながら解説していく.
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