特集 新人教育
新人教育の目標
芳野 純
1
Jun Yoshino
1
1太田医療技術専門学校理学療法学科
pp.357-363
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101656
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新人教育における目標設定の必要性
近年,理学療法士の教育のあり方について問われることが増えている.理学療法士の質的低下が問題視されている状況1)ではあるが,単に質の低下のみならず,対象者のニーズの変化や医療の高度化などによる社会的背景の変化,理学療法士の職域拡大や役割の多様化などにより,理学療法士に求められる能力そのものが高まっていることもその原因と考えられる.『理学療法白書2005』2)によると,約9割の理学療法士が,養成校卒業直後の理学療法士は,独立して理学療法業務を行うことは困難であると回答している.さらに理学療法士の卒前教育の到達目標のミニマムが「基本的理学療法が行えるレベル」から,「ある程度の助言指導の下で行えるレベル」に変更されたこと3)を考えると,資格取得後の継続教育の充実は必須であるといえる.今後,理学療法士養成校の卒業者数が年間1万人を超えることが見込まれている状況4)では,新人教育の質が,将来の理学療法士という資格自体の存在価値をも左右しかねないといっても過言ではない.
理学療法士の新人教育に限らず,教育を行う際に目標を欠いたままではよい教育は実現できないといわれている5).また成人学習理論において,能動的な自己決定型の学習者にするために,最終的な目標を示すことが提唱されている6).したがって,新人教育においても教育目標の設定が必要であるといえる.では,理学療法士が新人のうちに学ばなければならないものや,新人理学療法士の到達目標とは何であろうか.本稿では,他の医療専門職や他国の理学療法士の到達目標を提示し,理学療法士の新人教育目標について述べていきたい.
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