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リハビリテーション医療はチーム医療である,という「概念」を教えられたのは,筆者が清瀬の学生だったころだから,はるか昔のことである.理学療法士となって,臨床現場で目の前にいる患者さんに対して自分は何ができるのかとずいぶんと悩み,めまぐるしい現実に流されてゆくうち,チーム医療という「概念」はさらに高みへと昇華することなく,いつしか表層の理念となり,誰もが知っているが誰も読んだことのない古典(例えばダンテの神曲)の様相をまとっていった.この理由は自分で言うのも気が引けるが,チーム医療を作るための戦略を持たなかったからである.決して忘れ去ったわけではないが明示的には意識化されなかった課題,チーム医療について,本特集の「連携教育」が再び光を投げかけてくれるのである.
そもそも「連携教育」とは?という基本的疑問に応えてくれるのが大嶋論文である.大嶋氏は,医師や関連職種が「医療職全体や組織を管理するマネジメント教育を受けているのだろうか」という問題提起をいみじくも指摘している.そして,連携教育の先進国である英国と日本との比較において,その特徴が解説されている.興味深いのは,英国では個々人が自立した専門職として関わるのに対して,日本では組織の中での存在が重視されるという点である.続いての原論文では,本邦における大学での連携教育の施行過程が紹介されている.原氏の所属大学だけでなく,他大学医学部の参加を得て行われる連携教育演習の運営方法と教育評価について解説され,参加学生の自己評価の向上が認められたと指摘している.酒井論文は,看護学領域における連携教育の課題について,実際に連携協業を経験することの困難性と,看護職の専門性に関わる基本的視点の重要性が論述されている.高木論文では,昭和大学における連携教育の具体的方法として,問題解決型学習が紹介されている.あるモデル症例の情報を得て,多学科の学生が討論を通じて相互の役割を認識するよう求めてゆく方法であり,その時の学生のコメントは興味深い.
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