特集 筋再生と理学療法
筋の再生・肥大とサテライト細胞
柴田 雅祥
1,2
Shibata Masayoshi
1,2
1日本医療科学大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
2首都大学東京大学院人間健康科学研究科フロンティアヘルスサイエンス系神経再生科学分野
pp.575-580
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101443
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
近年,再生医療の分野は目覚ましい発展を遂げている.その発展の中心を担っているものの1つに幹細胞研究が挙げられる.幹細胞の基礎研究・臨床応用の材料としては,造血幹細胞などの組織幹細胞が用いられてきた(骨髄移植がその代表である).最近では,分化多能性をもつES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)や,京都大学の山中伸弥教授ら1,2)が作製に成功したiPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞)が中心的な研究材料として用いられている.これらは,再生医療の分野だけでなく,生物・医学界においても可能性が大いに注目されている.新聞などのメディアにおいても,未来の組織・臓器移植を見据えたiPS細胞を材料とする各種組織細胞の分化誘導成功に関する記事がしばしば紹介されている.
再生医療への注目が高まっている中で,理学療法士にとって一番身近な器官である筋を「再生」という側面から捉えることは意義深い.本稿では骨格筋を取り上げ(以後,本稿では「筋」という単語は「骨格筋」を指すものとする),筋の再生を担う幹細胞であるサテライト細胞の性質,サテライト細胞が関与する筋の再生・肥大のメカニズム,また,サテライト細胞以外の幹細胞による筋の再生の可能性などについて述べる.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.