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はじめに
2001年,世界保健機関(以下,WHO)総会において国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:以下,ICF)が採択され1),理学療法による支援のあり方も大きな転換期を迎えた.ICFの特徴は,対象児・者の生活を支援することに主眼を置いた点である.従来の国際障害分類(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:以下,ICIDH)は,対象児・者の機能障害や能力障害の改善に重点を置く障害構造モデルであった(図1a).この障害構造モデルは,あたかも対象児・者のもつ障害を“問題点”として捉え,社会参加が制限されるといった負の側面に注目した印象が否めない.それに対してICFでは,同じレベルの機能障害であっても,バリアフリーの整備などが進んだ環境であれば,活動や参加のレベルが向上するといった前向きな側面に焦点が当てられた.つまり,対象児・者の生活機能は,環境因子や個人因子などの背景因子と,心身機能・活動および参加が相互に作用を及ぼすといった障害構造モデル(図1b)へと変換した点が特徴である.このことは,われわれ理学療法士は,対象児・者がもつ“障害”にのみ目を向けるのではなく,障害児・者が生活を送る環境でその能力を十分に発揮できるよう働きかける必要があることを示唆している.
そこで本稿では,まず対象児・者がもつ「障害特性」と「環境」との関係性を多角的に捉え,地域生活を支援する小児理学療法のあり方を再認識する機会としたい.そのうえで,支援の現状についてまとめ,今後の課題について提言する.
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