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編集後記
鶴見 隆正
pp.358
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101163
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42巻4月号が皆様の御手元に届く頃には,全国各地から満開の花の便りが聞かれるようになっていると思います.
しかし75歳以上の高齢者にとって,今年の4月は,春爛漫とは喜べない「後期高齢者医療制度」が新たに始まります.この新制度の創設にあたって,国は,高齢化の進展によって有病率も高くなり,医療費の増大が見込まれるため,若い現役世代と高齢者との医療負担の公平化と医療財政の安定化を図り,より良い医療体制を目指そうとしています.このため,75歳以上の方は新医療制度と介護保険制度の両方の保険料を負担することになりますが,果たして狙い通りの医療サービスを保障できるのでしょうか.臨床現場では,「もっと理学療法を受けたい」という患者の願いも診療報酬上の日数上限によって困難になったり,また介護保険下の諸施設に入所したくても待機の方が多く,家族・本人が必死になって入所施設を探している場面に遭遇します.まさに現実の医療環境では,「リハビリ難民」,「介護難民」さらには「救急難民」,「出産難民」,「小児難民」などの現象が社会問題化しています.憲法第25条では「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と同時に「国の生存権保障の義務」を謳っていることを,国は忘れてはいけません.医療費亡国論にそった医療費抑制政策を見直し,国民の健やかな生活を保つための政策に転換することこそが,第25条の理念を具現化することにつながるのではないかと考えます.
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