講座 摂食・嚥下障害・3
パーキンソン病症例の摂食・嚥下障害
石井 光昭
1,2
,
中本 隆幸
3
,
澤 沙織
3
Ishii Mitsuaki
1,2
1佛教大学保健医療技術学部理学療法学科
2神戸大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程(脳機能障害リハビリテーション学)
3京都きづ川病院リハビリテーション科
pp.243-247
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101139
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
パーキンソン病は,中脳黒質緻密層のドーパミン性神経細胞の変性によって大脳基底核の機能障害を起こす緩徐進行性の疾患であり,主徴は安静時振戦,固縮,無動,姿勢反射障害の4つである.
パーキンソン病症例における摂食・嚥下障害の合併頻度は50%以上と報告されており,死因は誤嚥性肺炎,窒息,栄養障害など摂食・嚥下障害に起因するものが多い1).また,生命予後だけでなくquality of lifeにも大きな影響を与えている.James Parkinsonは『An essay on the shaking palsy』の中で,「口腔内に食塊が入った後の咀嚼・嚥下運動に時間を要する.嚥下の一連の協調的な運動が困難である.流涎がみられる」と述べており,パーキンソン病では,当初から摂食・嚥下障害の合併頻度が高いことが認識されてきた2).
Deanら3)は,パーキンソン病症例の長期管理における理学療法の課題の1つは,誤嚥から気道を保護することであると述べているが,これまでパーキンソン病症例の嚥下障害に対する理学療法士による取り組みについての報告は少ない.本稿では,パーキンソン病症例の摂食・嚥下障害と,これに関連する呼吸障害・姿勢異常について,筆者らの経験を含めて述べる.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.