特集 早期理学療法
手の外科における早期理学療法
山本 悟
1
,
酒井 和裕
2
,
小笠 博義
2
Yamamoto Satoru
1
1山口県立中央病院リハビリテーション科
2山口県立中央病院整形外科
pp.773-778
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100882
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手は,運動・知覚の両面で高い機能を有しており,わずかな外傷でも患者のQOLに与える影響は大きい.また,解剖学的構造が複雑で狭い容積に多くの組織が存在するため,修復と機能回復に専門的な知識が必要である.近年の進歩によって手の外科の治療成績は一段と向上し難治例に対しても高度の機能回復が求められているが,一方で,医療経済の観点から治療期間短縮と早期社会復帰が必要となってきた.このような観点から,手の外科領域でも早期理学療法が注目されている.本稿では,手の外科の代表的疾患である手指屈筋腱損傷を例に,手の外科における早期理学療法について概説する.
手指屈筋腱損傷
手指屈筋腱には,浅指屈筋腱(FDS)・深指屈筋腱(FDP)と長母指屈筋腱(FPL)があり,その損傷分類にはVerdan分類や国際分類(図1)が用いられる.このうち,MP関節近位部から中節骨遠位部に至るzone 2はFDSとFDPが狭い腱鞘内を通るため,断裂腱の縫合を行っても周囲組織との強い癒着を生じて不良な結果となりやすく,no man's landと呼ばれる.縫合部がzone 2外になる遊離腱移植術を行った時代もあったが,現在ではzone 2は専門医が腱縫合(端々縫合)を行うことが原則となっている.術後は,癒着をいかに予防し腱癒合させるかという点に主眼がおかれる.その手段として,現在,最も有効視されているのが早期運動療法である.
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