特集 実践理学療法のエビデンス
関節可動域の維持・拡大―実践理学療法のエビデンス
中 徹
1
Naka Toru
1
1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部理学療法学科
pp.361-369
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100746
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関節ROMの「制限」と「過剰」という2つの異常のなかで
日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が統一した「関節可動域表示ならびに測定法」が定めている関節可動域テストにおいては,その測定方法で測定した場合の各関節の「参考関節可動域角度」が示されている.臨床的には,関節構造に問題があるかないかを徒手的な他動運動で判断する場合の判断基準が「参考関節可動域角度」ということになる.この基準より少ない場合を関節可動域(以下,ROM)の「制限」と呼び,基準を超えた場合をROMの「過剰」と呼び,両者を併せた概念がROMの「異常」ということになる.どちらの異常も運動能力の制限につながる可能性があるが,理学療法での対応はROM制限に対するものが多いのが現状であろう.今回のレビューにあたって検索した文献においても,多くが「ROM制限をどのように改善するか?」という問題意識とその周辺事項に対する研究であり,ROM制限への理学療法は理学療法士の高い関心事であることを示している.しかし,ROMの過剰という患者様にとって,解決すべきもう一方のROM異常に対する理学療法介入に関する報告は,残念ながらほとんどみられないのが現状であり,別の機会に是非論じる必要があると考える.以上のような背景を踏まえ,本稿では,理学療法の技術体系も多様であり,実際にその技術を必要とする患者様も多いと思われる「ROM制限を改善あるいは維持させる理学療法の実践」について限定し,その臨床的エビデンスの現状と今後について報告論文をいくつか取り上げて論じたい.
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