特集 理学療法における運動療法と装具療法の融合
小児領域の療育における装具使用の実際
彦田 龍兵
1
Hikoda Ryuhei
1
1大阪発達総合療育センター
pp.837-843
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100671
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小児に対する理学療法の内容とともに,装具療法は,疾患や年齢層によって様々である.本稿では中枢神経疾患,特に脳性麻痺を有する子ども(以下,脳性麻痺児)を中心に,運動療法と装具療法との補完しあう関係について事例を含めて私見を述べる.
脳性麻痺については過去に学校の授業や講習会,文献などによって知識を得た人は多いと考えるが,実際の臨床像は変化してきている印象をもつ.例えば,現在では療育現場で全身が過緊張を示す強直性の四肢麻痺をもつ子どもに接する機会はほとんどない.周産期医療が発展し,重篤な脳病変への移行を回避できる可能性が拡大したことも要因といえる.その一方で,広範囲の脳病変に起因した,重度の機能障害を有する子どもに出会う.全身が低緊張状態で活動性の低い重度の四肢麻痺で,親子関係が構築しにくいだろうと想像される子どももいる.また,アテトーゼ型脳性麻痺をもつ子どもも少なくなっている印象をもつ一方で,満期産で原因が特定できないが,アテトーゼ症状を認める事例もある.このように,以前に学んだ知識や技術だけでは,1人ひとりの状態やニーズに応じた理学療法を提供することが困難になっているのではないかと危惧している.理学療法を実施する際に,知識の基盤となる子どもの成熟過程や正常発達過程,解剖・生理・運動学などを詳細に考察し応用しているが,未だ「正常」の範疇も曖昧であり,発育発達の中で不確定な要素をかかえつつ,予後予測に時間を必要とすることもある.
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