文献抄録
トレッドミル歩行中の手すりに軽く触れることと重心の安定性について
岡田 誠
1
1藤田保健衛生大学衛生学部リハビリテーション学科
pp.886
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100585
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回の研究の目的は,トレッドミル歩行中に手すりを軽く持ったときにそれが身体のバランスに及ぼす影響について検討することである.対象は20名(男性7名,女性13名)の大学生とし,その内17名が右利きであった.計測条件は,手すりを強く持ったとき・手すりを軽く持ったとき・手すりを持たないとき・開眼状態・閉眼状態の5条件で計測を行った.手すりの高さは90cmとし,手すりは片側のみ持ち左右とも検討した.トレッドミルの速度は3km/hとし5分間の練習を行った後に計測を行った.計測項目としては,重心位置の前後,左右成分の移動量を開眼,閉眼それぞれの条件で10歩行周期分計測した.ただし,閉眼した状態で手すりを持たない時は4~5歩行周期しかできなかった.
手すりを軽く持ったときと強く持ったときの重心の前後方向の動揺は,開眼・閉眼ともに大きな差は認められなかった.しかし,閉眼状態で手すりを持たないときでは,トレッドミルの後方に流されてしまい前後方向に大きな動揺を示した.一方,重心の左右方向の動揺は,手すりを軽く持ったときも強く持ったときも閉眼状態のときに大きくなった.トレッドミル歩行時の重心の加速度については,手すりを強く持ったときのほうが軽く持ったときよりも加速度が有意に増加した.また,閉眼した状態で手すりを持たないときは,後方に流れてしまい2~3秒しか計測できなかったものの重心の加速度は最も高い値を示した.手すりを持つ力については,開眼状態,閉眼状態,閉眼後再び開眼状態ともに,右手で手すりを持つ力のほうが左手よりも大きい結果であった.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.