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理学療法士にとって最も近隣である学問領域の1つがリハビリテーション医学であることは各人が認識するところであるが,日本リハビリテーション学会の会員となっている理学療法士を除くと日本理学療法学術大会と日本リハビリテーション医学会学術集会の違いについて十分な見識を持っている方は極めて少ないのではないだろうか.第41回日本リハビリテーション医学会学術集会は東京大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学・江藤文夫教授が会長を務め,西新宿の京王プラザホテルを会場として2004年6月3日(木)・4日(金)・5日(土)の3日間に開催された.この学術集会開催中は,新緑がさわやかに目にしみる晴天が続く中,メインテーマである「リハビリテーション医療のさらなる展開に向けて―リハビリテーション医学教育の充実と普及」のとおり学会の現状と将来展望について活発な意見が交換された.
プログラムは,会長講演「医学的介入の指標としての活動とリハビリテーション医学」より開始された.この会長講演では,医療の指標として短期間の生活における活動の重要性をわかりやすく説明するとともに長期間としての人生に対する影響に関連して課題提起が行われた.その後,特別講演として聖路加国際病院顧問の土居健郎先生が「リハビリテーションと精神医学」の中で,独自の学説である「甘え」理論による障害受容とリハビリテーション医学のとらえ方について説明された.その後,ほとんどの学会員が参加して総会が90分間行われた.総会の後は3件同時開催されたランチョンセミナーが行われ,午後最初のプログラムとしてとして英国University of Nottingham Medical SchoolのChris Ward教授による招待講演「Rehabilitation in Parkinson's Disease」が行われた.Parkinson病に対するリハビリテーション医学の目的,ICF(国際生活機能分類)からみた疾患の考え方,Parkinson病の各症状に対する薬物効果の特性,バイオメカニクスからみたParkinson病患者に対する姿勢,突進現象やすくみ足に対する運動療法の考え方など理学療法士としても大変興味深い内容であった.この招待講演後の午後2時より9会場に分かれてプログラムが進められた.2日目のシンポジウムでは,「新臨床研修システムとリハビリテーション科専門医の養成」というテーマのもと,厚生労働省,学会,国立大学法人附属病院,私立大学病院,市中病院など様々な立場のリハビリテーション科医からみた専門医の養成に関する現状と問題点について話し合いが行われた.また3日目の教育講演の「アスレチックリハビリテーション」では,バスケットボール,野球,サッカーなどのアスリートに対するagility drill(敏捷運動)について,損傷時期から競技復帰までをスライドとビデオを用いてわかりやすく解説されていた.また「訓練量とリハビリテーションの効果」では,systematic review(系統的総説)およびRCT(無作為化比較試験)による根拠に基づいたevidence basedによる解説が行われた.これによると脳血管障害に対するリハビリテーション医療の合計時間が多いほど,機能障害レベルでもADLレベルでも回復が良いというevidenceが蓄積されていることを示し,診療報酬上の単位数の上限の見直し,セラピストの労働条件およびマネージメントに対する今後の課題などを含めて,わかりやすく解説された.
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