先輩からのエール
心の声を聴こう
西川 浩
1
1社会福祉法人新川ヴィーラ・デイサービスセンター
pp.394
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100483
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私が日頃敬愛する理学療法士(以下PT)のK氏が,頸髄を損傷する事故に遭われ,頸椎後縦靱帯骨化症の既往歴に加えて第4頸髄損傷による四肢麻痺と呼吸障害が生じてしまった.集中治療室から一般病棟へ移られたのでお見舞いに伺ったところ,K氏は気管切開と挿管によって気道が確保され,人工呼吸器によって呼吸管理がされており,上体をやや起こした姿勢でベツドに臥床されていた.私がお見舞いの言葉をかけると,大層嬉しそうな表情で喜ばれ,口唇を激しく動かして話そうとされた.しかし,声が出ないため口唇の動きから言葉を判読しようとしてもほとんど読み取ることができず,私はただじっと手を握り,声にならない口唇を見つめて相槌を打つだけで,一方的に自分の思いを語りかけることしかできなかった.それでも私の話しかけに対して,頷いたり,顔を横に振ったり,綻ばせたり,しかめたり,ときには涙を浮かべたりと多彩な表情を示された.
小一時間足らずであったが,その間,懸命に話そうとされたためか,K氏の表情に疲労の色が見えはじめたので,枕頭を辞去することにした.
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