特集 脳血管障害による摂食・嚥下障害の理学療法
摂食・嚥下のメカニズムとその障害
関沢 清久
1
Sekizawa Kiyohisa
1
1筑波大学臨床医学系呼吸器内科
pp.247-249
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100453
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従来,飲み込むという動作は口腔期,咽頭期,食道期の3期に区分される.多くの原因で飲み込みの障害が起こるが,いずれも肺炎の発症につながる(表).なかでも,脳血管障害が嚥下障害の原因頻度として最も高く,脳血管障害患者では急性期,慢性期のいずれにも嚥下障害が高率に起こり,肺炎発症の最大原因となる.しかし,脳血管障害患者の肺炎発症は,嚥下障害を中心にいくつかの要因が絡み合って生じると考えられるため,本稿では複数の要因を含めて脳血管障害患者に生じる肺炎発症の機序について述べる.また,飲み込むという動作は3期に区分されるが,脳血管障害にみられる嚥下障害では咽頭期の障害が最も重要と考えられているゆえ,咽頭期嚥下障害の発症機序とその対策について述べる.
脳血管障害に伴う肺炎の発症機序
1.口腔―咽頭部および胃内細菌叢
脳血管障害の大半は高齢者に起こるが,高齢者肺炎発症の第一段階として,口腔―咽頭部および胃内細菌叢の変化が重要である.健常人の口腔内には通常嫌気性菌が存在し,病原性細菌の繁殖を抑制している.しかし,加齢に伴う唾液分泌量の低下,ADLの低下,意識障害,心不全,肝不全,慢性閉塞性肺疾患,糖尿病などの基礎疾患の存在,喫煙,飲酒過多,抗生剤服用などにより,口腔内細菌叢がグラム陰性桿菌など抗生剤抵抗性の細菌種に変化する.同様に,制酸剤,H2 ブロッカー,経管栄養などによる胃液のpHの上昇や抗生剤の使用により胃内嫌気性菌細菌叢が失われ,グラム陰性桿菌が繁殖する.以上述べた事項は高齢者ほど起こりやすく,結果として体内に病原性細菌が準備される.
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