連載 目標を設定した在宅リハビリテーション
摂食嚥下障害
野原 幹司
1
1大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室
キーワード:
在宅医療
,
慢性期
,
変性疾患
,
支えるリハビリテーション
Keyword:
在宅医療
,
慢性期
,
変性疾患
,
支えるリハビリテーション
pp.832-833
発行日 2016年9月10日
Published Date 2016/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200719
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに—在宅の摂食嚥下障害の現状
超高齢社会を迎え,在宅医療の充実が求められている.これまでは急性期・回復期医療が求められており「病気・障害を治し改善する医療」が必要とされていた.しかしながら,超高齢社会になるにつれ疾患構造が変化し,慢性期医療に対する必要度が高まりつつある.すなわち,急性疾患を乗り越えて生き延びた「障害をもった高齢者」が爆発的に増加しているのである.現在の医療制度では,「障害があるから」という理由で入院できる病院は少なく,障害をもった高齢者は,病院ではなく在宅や施設で生活している.したがって,高齢者の絶対数が増加した現在は,「病気・障害を治し改善する医療」だけではなく,生活の場である在宅や施設での「障害を支える医療」が必要とされている.
摂食嚥下障害(以下,嚥下障害)においても同様である.脳卒中の急性期・回復期を経過した症例は,嚥下障害が残存したまま在宅や施設に移る.認知症やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の症例は,在宅や施設で生活しながら徐々に嚥下機能低下を生じる.すなわち,極論を言うと在宅の嚥下障害は「治らない・よくならない」症例が増えている.このような慢性期の症例に対しては,「嚥下障害を改善する摂食嚥下リハビリテーション」よりも「嚥下障害を支える嚥下リハビリテーション」に重きを置いた医療が求められている.在宅リハビリテーションを考えるときは「病院とは異なるステージの症例を対象としている」という大前提を忘れてはならない(表).
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.