入門講座 診療記録の書き方・3
教育研究に役立つ診療記録の工夫
石倉 隆
1
Ishikura Takashi
1
1医療法人柴田病院リハビリテーション部
pp.463-473
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100320
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はじめに
かつて診療記録は,「医療者のためのもの」というニュアンスが強く,われわれは診療記録を自らがわかりやすいように記録してきたように思う.過去の文献を紐解いても,診療記録の意義に,データ蓄積・保存,治療計画立案,治療効果判定,知識・技術体系構築,診療行為事実確認,研究データ,疫学資料,教育媒体などを掲げるものは多いが1,2),多職種相互理解や患者・家族説明を加えているものは見当たらない.しかし昨今のチーム医療の推進や情報開示,個人情報保護の観点から,統一された,わかりやすい記録方法が推奨されるようになった.当然,現在でも診療記録の意義自体は従来と何ら変化したわけではなく,統一した治療方針を実践するための多職種相互理解や患者・家族への説明材料,情報開示に伴う患者・家族への公開という要素が加わったに過ぎない.ただ,この新たに加わった意義に耐え得る診療記録の作成には種々の配慮が必要であり,一面ではこれが逆に診療記録を自由に利用する妨げとなっているような気がする.
このような診療記録作成方法の変革の中で,記録そのものを教育研究に役立てるように工夫して利用していくのは至難の業である.診療記録は診療記録として作成し,教育研究には個人情報保護法を遵守した上で,別冊として記録していくのが通常であろう.筆者自身,診療記録を直接教育研究に役立てていることは少ないように思えるが,これまでの数少ない実践経験を踏まえ,解説していく.
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