特集 腰部・下肢関節疾患の理学療法―姿勢・動作の臨床的視点
腰部・下肢関節疾患に対する姿勢・動作の臨床的視点と理学療法
加賀谷 善教
1
,
藤井 康成
2
Kagaya Yoshinori
1
1鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センター
2鹿屋体育大学保健管理センター
pp.163-170
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100263
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
地球上のあらゆるものは,常に重力という負荷を受けている.無負荷の状態であっても,一瞬たりとも休まない重力という強大なエネルギーに逆らって姿勢を保持し,自分の身体を移動させることが求められる.われわれ人間は,経験的に一関節に特定の負荷が加わらないよう効率的に動作を遂行しているが,一方で筋活動を抑制し,骨・靱帯性支持を用いることで,無意識的に楽な姿勢をとろうとしている(図1).これらの一時的な姿勢や崩れたバランスは立て直すことが可能だが,その状態が恒常的に継続すると,重力に抗する力学的作用でそれを補う力が生じ,身体のバランスをとるようになる.やがてその非効率で誤った動作や代償的動作が学習され,他の近接関節にまで影響を及ぼす.
腰部・下肢関節疾患の理学療法をデザインする上で重要なのは,この不良姿勢や誤った身体操作によって生じる負荷を推定し,その負荷を減弱させるための効果的な理学療法モデルを立案することである.そのためには,身体に生じる負荷の特性を知り,実際の動作中にどのような負荷が生じているかを評価できる視点が必要である.本稿では,姿勢・動作からみた理学療法モデルの考え方を,骨関節疾患の理学療法例に触れながら,アライメント評価の観点から解説する.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.