特集 ボディイメージ
運動とボディイメージ
橋本 公雄
1
,
内田 若希
2
,
船橋 孝恵
2
Hashimoto Kimio
1
1九州大学健康科学センター
2九州大学大学院人間環境学府
pp.1059-1064
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100219
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はじめに
人は生涯における身体的な発達に伴い,体型,外見,バランス,機能の変化とともに身体に対する意識も変化する.児童期には身体の大きさや強さが急速に変化し,身体に対する気づきが高まり,青年期には性的機能の促進がみられ,より“女性らしさ・男性らしさ”を求めるようになる.中高年期では外見の変化と体力の低下がみられ,これらの身体的変化を否定する気持ちと,受け入れようとする気持ちの葛藤が生じる.
このように,身体あるいは身体的変化とそれらに対する意識はすべての世代の人々に関わるものであり,そこに自己概念の一部としてのボディイメージの問題が存在する.ボディイメージは,身体の内的・外的感覚からなるイメージであり,触覚や筋感覚刺激に結びつく活動によって発達する1).健全なボディイメージを有する人は,自分の身体の形や大きさについて正確に知覚し,肯定的な感覚と思考を持ち,これらの評価に基づく方法で行動する.しかし,逆に否定的な自己評価を有するとボディイメージ障害となり,異常な行動へと連動する場合も少なくない.もちろん,このようなボディイメージは身体的変化だけではなく,メディアや文化的な影響,さらには個々人が参加する活動などの影響を受けて形成されることは言うまでもない.
運動・スポーツへの参加は身体的変化をもたらし,健康やパフォーマンス発揮と関連するために,運動・スポーツ心理学研究でもボディイメージやこれに類する心理的概念は研究対象となっている.そこで本稿では,運動・スポーツ心理学の研究領域におけるボディイメージの概念,変容のメカニズム,評価法,そして運動・スポーツとボディイメージの変容について概観する.
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