今日からできる思春期外来5
思春期患者とボディ・イメージ
白川 佳代子
1,2
1しらかわ小児科医院
2九州女子大学心理社会学科
pp.434-436
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100896
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Case
緘黙の女子中学生の例
中学3年生Aちゃんの緘黙は,小学5年生より続いている.また最近では物忘れがひどくなり,知的な問題も疑われるようになった.さっそくスクィグル・ゲーム1)(J1)に導入すると,黙りこくっていたAちゃんが小さな口を開いた.
1枚目:Aちゃんは女の子の上半身を描き「先生,服描いて」とリクエストしてきた.そこで筆者は,白い襟のついたチェックのドレスをまとわせた(図1).ところがAちゃんは,「今風じゃない」と不満気である.2枚目:筆者のスクィグルに,Aちゃんは今風のキャミソールを着た女性を描き加えた(図2).「いいえ,私はキャミソールよ」と言わんばかりである.筆者は「そうね.あなたにはキャミソールが似合いそう」と共感した.3枚目:今度は成熟した女性の後ろ姿であった(図3).
Aちゃんはスクィグル・ゲームのなかで何度も女性の姿を描いては,「これが私? 私ってどんなふうに見えるの?」と確認を求めているのである.スクィグル・ゲームを考案したウイニコットは,患者がもってくるものを患者に与え返すことによって,患者は自己を見出し,存在することができ,現実感をもてるようになると述べている.いわば治療者は,患者の身体を映し返す平面鏡の役割を担っている.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.