講座 基礎理学療法学研究方法論・1
社会学的調査による基礎理学療法学研究方法論
佐藤 秀紀
1
,
盛田 寛明
1
Sato Hideki
1
1青森県立保健大学健康科学部理学療法学科
pp.899-908
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100188
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理学療法においては,対象となる個人とそれを取り巻く環境などその生活全般に関わる必要がある.したがって,対象とする障害は全般的かつ総合的な概念となる.この考え方は,国際生活機能分類(International Classification of Functioning;ICF)にも反映されている.ICFでは,心身機能・構造(body functions and structures),活動(activities),参加(participation)の各障害レベルを包括する概念として生活機能(functioning)を捉えている.理学療法を実施する際,この生活機能とそれに包括される各障害レベルを重視しつつ,それらの間の相互作用を捉える必要がある.つまり,理学療法が対象とする分野は,社会モデルとしてのパラダイムを持つ.
社会モデルにおいて,現実の社会集団に生じる諸事象は非定型かつ複雑であるため,その把握が容易でない場合が多い.この混沌とした社会事象を定量的または定性的に把握するうえで有効な手段が社会調査である.社会調査では,複数の場で生じ,かつ反復されることによって一定の共通性や法則性をもつ事象を対象とし,得られた結果には社会的意味づけが必要となる.理学療法では,現象をあまり細分化せずに捉えたほうが現実の姿をよく反映する側面をもつ.社会調査は,何よりも現実の社会事象をありのままに把握しようとし,人間の社会的な生活に即して捉えるものである.
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