- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1980年代に心臓リハビリテーションにおける理学療法が開始された当初の目的の1つは,急性期の安静治療からの離脱であり,急性期プログラムを実施する上で体力予備能の低い高齢者や女性を中心に歩行障害がみられていた1).1990年代には理学療法実施において早期離床が確立し,手術後1~2日での離床を確保することで安静臥床による歩行障害を生じる症例は激減した.それに伴い,心臓外科手術後における理学療法の目的は,行動許容範囲の拡大や有酸素運動が主体となった.
また,近年OPCAB(off-pump coronary artery bypass)やMIDCAB(minimally invasive direct coronary artery bypass)など低侵襲手術の進歩により,早期に理学療法が開始され短期間で退院すること,手術適応範囲が広がり超高齢者や低体力者も手術治療の対象になったことが大きな変化である.このような経過の中で,急性期プログラムは手術後の合併症(臥床・肺炎・非活動など)によって規定されることよりも,術前機能(年齢・嚥下機能・筋力など)や既往歴(脳血管障害・整形外科疾患など)によるlimiting factorが理学療法実施上の問題点となる症例が増えている.このような症例に対する理学療法の目的は歩行能力の改善など基本的ADL(activity of daily living)能力の獲得が主体となる.つまり高齢社会と低侵襲手術をキーワードとした心臓外科手術後理学療法の目的は,行動許容範囲の拡大や有酸素運動が主体になる症例と,基本的ADL能力の獲得が主体となる症例に2極化している.また低侵襲手術によって急性期の入院期間が短縮したことで,2極化した両者とも有酸素運動などによる運動耐容能改善や2次予防および運動の習慣づけ,QOL(quality of life)維持向上などの理学療法は,回復期の外来プログラムに依存する結果となり,その重要性も増している.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.