入門講座 重症患者の理学療法リスク管理・3
多臓器外傷の理学療法リスク管理
山下 康次
1
,
森山 武
1
,
高橋 葉子
2
Yamashita Kouji
1
1市立函館病院リハビリテーションセンター
2市立函館病院集中治療室
pp.257-266
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100057
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多臓器外傷を伴う患者の理学療法においては,実施上様々な制限をきたすことが予想される.また,受傷原因である交通外傷や災害などにより外力による高エネルギーが身体に加わり,救命救急医療の向上により患者が救命されたとしてもそれ以降に身体的・形態的に障害を残すものは少なくない.多臓器外傷において特徴的なことは,損傷されていない臓器をも考慮して身体の集約的・集中的な治療を行わなくてはいけないことである.そうした環境の中で理学療法士として,何を目的として,何に注意して,何を行うのか,ということを明確にしておかなければならない.
多臓器外傷における理学療法
多臓器外傷の多くの患者は,生命維持に必要な主要臓器が損傷され,救命処置後には様々な生命維持装置(人工呼吸器,人工心肺装置,補助循環装置,人工透析など)の装着を余儀なくされていることが少なくない.さらには全身状態を安定させるために数多くの薬剤が使用されている.このような強力的かつ集中的な治療を行うためには,患者はある程度の鎮痛・鎮静が必要となる.こうした環境下では患者の協力は得られないため,理学療法を実施するためには注意深いモニタリングが必要となる.また,急性期には救命治療や集中治療が優先されて臥床が遷延していることも少なくなく,理学療法が介入するときには様々な二次的合併症を併発していることもある.したがって,可能であれば理学療法は救命治療や集中治療と同時進行し,全身管理下に早期離床の可能性を検索する必要がある.実際に多臓器外傷における理学療法に視点を向けたときに,理学療法士が行えることは,関節可動域練習や体位変換を含む呼吸理学療法が中心となることが多い.
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