増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
2.検査の実際と症例の解釈
1)血小板機能検査
B.症例呈示
(2)抗血小板剤の効果
田上 憲次郎
1
,
川越 栄
2
1東京都臨床医学総合研究所循環器病研究部門
2東京都立駒込病院内科
pp.176-180
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906509
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
血小板は正常人の流血中では,せんべい状の形態を保って循環している.かかる条件下での血小板を一般には(活性化刺激を受けていない)静止状態の血小板という.しかしながら,傷害された血管壁あるいは内皮細胞に被われていない異物と接触すると,血小板は速やかに粘着(adhesion),せんべい状から球状への形態変化(shape change),放出反応(分泌)(release reaction,またはsecretion),および凝集(aggregation)といわれる一連の反応を引き起こす.そして,その部位において血小板血栓(止血血栓)が形成される.このような反応は止血血栓の形成時のみでなく,いわゆる動脈血栓の形成時にも生じるとされる.実験的に血小板凝集計を用いて,多血小板血漿(platelet-rich plasma;PRP)に種々の刺激剤(アデノシン二リン酸〔ADP〕,コラゲン,トロンビンなど)を添加した場合にも,ほぼ似たような反応が生じるのは周知のことである.
抗血小板剤はこのような血小板の反応のうちで生体にとって害になるようなものに対して,予防もしくは治療の目的で考案されたものであり,上記の一連の反応をどこかで断ち切ることにより,血栓の形成を阻止することを目的とする.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.