特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症治療薬とモニター検査
1.抗血小板剤
中井 桂司
1
,
長屋 章三郎
1
,
西川 政勝
1
Keiji NAKAI
1
,
Shozaburo NAGAYA
1
,
Masakatsu NISHIKAWA
1
1三重大学医学部第2内科
pp.272-275
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903147
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はじめに
現在,血栓発生の際に血小板が果たす役割の重要性が広く認識され,また種々の新しい抗血小板薬が登場し,日常の臨床においても抗血小板療法が積極的に実施されるようになっている.しかし,種々の血栓性疾患に対して血小板が血栓生成にどのような役割を果たしているか,そして抗血小板療法を実施するに当たり,多様な血小板機能の何を抑制すべきか必ずしも明らかではない.
以前から,欧米において虚血性心疾患や脳梗塞などの血栓症に対するさまざまな抗血小板剤の効果について,大規模臨床調査が行われ抗血小板療法の再発予防に対する有用性が確認されている.しかし,対象症例やその病態,投与薬剤とその投与量・投与方法,投与効果の判定方法がまちまちであり,多くの問題点を抱えていると考えられる.薬剤選択の問題もさることながら,これらの大規模臨床調査においてさえ,抗血小板剤の投与が血小板機能などのモニタリング検査を行うことなく施行されているのが現状である.それにはいくつかの現実的な問題もあるが,投与によって実際にどの血小板機能がどの程度抑制されているのか,的確に把握する必要があると思われる.高血圧症や高コレステロール血症治療薬の投与の際には必ずモニタリングがなされ,投与効果の判定さらには投与量の調節,他の薬剤への変更や併用が行われている.また,薬物動態における個体差の問題も無視できない.さらに,抗血小板剤の投与は必然的に出血という副作用を招く恐れもある.
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