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菊池病
菊池 昌弘
1
1福岡大学医学部第1病理学
pp.493-494
発行日 2002年5月1日
Published Date 2002/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906204
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はじめに
1972年,菊池ら1)が,九州大学での10年間に行われた生検リンパ節の検索で,リンパ節の一部に細網細胞様大型細胞の密な増殖がみられ,核崩壊産物や,赤血球や核崩壊産物を貪食した組織球を伴い,好中球,好酸球,形質細胞などの炎症細胞の浸潤を認めず,壊死傾向の乏しい病変を28例に見いだすとともに,これら症例の予後を調べ,いずれも後遺症なく生存していることを確かめ,特異な組織像を呈するリンパ節炎として報告した.これらの症例は,臨床的には主に若い成人の頸部リンパ節を冒し,半数では発熱や腫大したリンパ節に疼痛を認めるとともに,白血球数は減少していた.これらの患者の2年から10年に及ぶ予後調査ではいずれも健康であった.同年,藤本ら2)も,同様な症例を,特異な融合性リンパ球崩壊壊死がみられ,肉芽形成を見ないリンパ節病変として報告し,頸部の亜急性壊死性リンパ節炎という名称を提唱した.その後このような病変の存在が世界的に知られるようになり,東洋人に多く見られるが,白人は比較的まれであり,黒人には極めてまれであることが明らかとなっている.
そして,今日なお,組織学的に本疾患を悪性リンパ腫と誤診することがあるために特に注目されている.最近ではKikuchi's disease,Kikuchi-Fujimoto disease,histiocytic necrotizing lymphadenitisなどの名称が多く使用されている.
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