増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅶ.凝固
7.プロテインC,プロテインS
黒澤 晋一郎
1
1帝京大学医学部第三内科/輸血部
pp.253-257
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901959
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プロテインC(PC)はJ.Stenfloによりクロマトグラムの3番目のピークにABCのCとラベルされたところから世界中に広まった名前である.プロテインS(PS)はDi Scipioらによって精製されたが,大学のあるSeattleのSを取って名づけられた.どちらも血液凝固の制御に重要な役割をしていることが明らかになってきた.
血液を抗凝固剤を混ぜないで,血管の外へ取り出すと間もなく固まってしまう.これは,血液自体の中に固まろうという性質があるからで,血液凝固系の作用による.出血が起こったとき,それまで液体で循環していた血液は固まって止血栓を作り出血を止める.この過程を止血という.外に取り出した血液は全部凝固してしまい,反応が途中で止まることはない.これに対して止血栓ができた場合には,出血を止めるのに必要なだけの凝固が進むとそこで反応が止まり,残りの血液は流動性を保ったまま全身を循環し,体中の血液が全部固まってしまうようなことは正常では起こらない.このしくみを血液凝固制御機構と呼ぶ.健康な人では血液凝固制御機構もしっかりと働いているが,病気によってこの働きが弱まってくると血管の中で血液が凝固してしまうことが実際に起こる.これが血栓症である.血栓が形成されると血管を閉塞して,その部位の循環障害を起こす.
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