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Staphylococcus aureusは,従来,遊離型コアグラーゼ産生能,クランピングファクター,耐熱性DNase産生能,ヒアルロニダーゼ産生能,マンニット分解能などの性状によりほかのブドウ球菌と区別されている.この中でも遊離型コアグラーゼ産生能が最も重要な指標とされ,陽性の場合にのみStaphylococcus aureusと同定されている.しかし,コアグラーゼ試験は,使用する血漿の動物種(通常はウサギ血漿を使用),個体差や抗凝固剤の種類による反応の相違が知られており実施には十分な注意を要する.さらに正確性を期するために耐熱性DNase産生能,ヒアルロニダーゼ産生能などの試験を同時に実施することをすすめている報告もある.また,コアグラーゼ試験は,最終判定までに18〜24時間を必要とし,迅速診断には難がある.以上は,Staphylococcusの産生する酵素を指標として同定する方法であるのに対し,Staphylococcus aureusの細胞壁に存在するプロテインAと呼ばれる蛋白を検出し同定する方法がある.これは,Staphylococcus aureasのプロテインAは,菌株により含有量の差があるが,ほとんどの菌株が共通してもっていることが知られており,さらにこの蛋白はヒトおよび他の哺乳動物の免疫グロブリンIgGのFc部分と特異的に結合する性質をもっている(図1).
この性質を利用してStaphylococcus aureusを迅速同定したのが,Winbland1)(1973)らの報告したヒツジ赤血球を抗ヒッジ赤血球ウサギ血清で最小凝集素価の1/4量で感作後,1回生理食塩水で洗浄した3%ヒッジ赤血球液を使用しコアグラーゼ陽性ブドウ球菌とスライド凝集反応を行い88.3%の一致率を得ている(図2).
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