検査報告書の書きかた 内分泌検査・1
甲状腺機能異常の検査
小林 功
1
1群馬大学医学部臨床検査医学
pp.773-778
発行日 1997年8月1日
Published Date 1997/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903211
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
甲状腺機能異常とは
甲状腺機能異常を示す病態は,甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の2種類に大別される.一般に甲状腺機能異常は特有の臨床症状を参考にして,血中甲状腺ホルモン(T4,T3)と下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone;TSH)との組み合わせ検査によって診断される1).甲状腺ホルモンとTSHとの関係は,いわゆるnegative feedback機構を考えると,理解しやすい(図1).この生体機構の特徴は,下位ホルモン(T4,T3)の増減によって,上位ホルモン(TSH)の分泌が調節されていることである.例えば,橋本病(慢性甲状腺炎)により甲状腺機能低下症に陥った症例では,甲状腺におけるホルモンの合成・分泌が障害されて,血中甲状腺ホルモン濃度は減少するため,下垂体からのTSH分泌は増加する.一方,バセドウ病による甲状腺機能亢進症では,血中に存在する刺激抗体(TSHレセプター抗体)により,甲状腺におけるホルモンの合成・分泌が促進し,血中甲状腺ホルモン濃度は増加するため,下垂体からのTSH分泌は抑制される.こうした関係を念頭に置けば,甲状腺機能異常の病態の把握は容易になると思われる1).
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.