増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
産科編
VII 偶発合併症妊娠
甲状腺機能異常
大柴 葉子
1,2
1山王病院産婦人科
2慶應義塾大学医学部産婦人科
pp.283-286
発行日 2014年4月20日
Published Date 2014/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103739
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疾患の概要
甲状腺機能異常は周産期アウトカムに負の影響があると考えられる.若年女性に多い疾患のため,妊娠前,妊娠中に甲状腺腫大や以下の臨床所見を認めた場合には,積極的に甲状腺機能検査を行う.甲状腺機能亢進症では,頻脈,体重減少,手指振戦,発汗増加,神経過敏,息切れ,易疲労感など,低下症では,無気力,眼瞼浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,記憶力低下,便秘,嗄声といった臨床症状があるので留意する.妊娠初期には胎盤からのホルモンによる甲状腺刺激作用のため,甲状腺機能は一時亢進状態(甲状腺中毒症)となるが,多くの場合は自己抗体陰性であり,Basedow病とは鑑別を要する.
甲状腺機能亢進症の薬物治療では,チアマゾールによる妊娠初期の催奇形性の問題から,妊娠を考える前に薬物療法以外の代替療法についてあらかじめ患者と話し合っておくことがよい.甲状腺機能低下症では,流産との因果関係が示唆され,不妊・不育症においては診断を確定したら早期に治療を開始する.
甲状腺機能異常のある患者は産後も甲状腺機能は不安定であり,さまざまな甲状腺の病態を示す.
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