今月の臨床 婦人科内分泌療法─病態の理解と正しい診断に基づく対処・治療のポイント
更年期・老年期
8.甲状腺機能異常
下平 和久
1
1昭和大学医学部産婦人科学教室
pp.562-567
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102650
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1 概 念
閉経前後の婦人が,発汗,肩こり,不眠,不安・焦燥感などを訴え,更年期障害を疑って婦人科外来を受診することは日常診療で普通に遭遇する事象である.この場合,問診のみでただちに更年期障害と診断し,その日のうちにホルモン補充療法(HRT)あるいは漢方治療を開始することを,患者側から強く求められることが多い.しかしながら,「更年期障害の診断」は,ある意味除外診断であり,鑑別すべき疾患には,各種内分泌疾患,精神神経疾患などが含まれている.このなかでも特に,甲状腺機能異常はかなりの有病者数があるにもかかわらず(わが国の甲状腺疾患有病者数は約500万人),発見に至らないことが多い疾患であると考えられる.
問診のみでHRTや漢方療法を開始し,治療に抵抗する場合に初めて甲状腺機能検査を行うのではなく,更年期障害や月経異常患者の初診時のシステマチックな検査の一環として甲状腺機能スクリーニングを施行すべきと考える.
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