増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
輸血感染症
マラリア,パルボウイルス,その他
大友 弘士
1
,
加来 浩器
1
1東京慈恵会医科大学熱帯医学教室
pp.314-318
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903169
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はじめに
輸血は,それが適応となる患者には劇的な効果をおさめ得る治療手段であり,補充療法の最たるものとされている.ところが,移植片体宿主病(graft versus host disease;GVHD)やヘモジデリン沈着症などとともに,各種の病原体の伝播によって患者に重大な侵襲を加える輸血後感染症が輸血の副作用や合併症として極めて重要である.そこで,日本赤十字社血液センターではこのような感染症を可及的に予防するため,供血者にHBV(B型肝炎ウイルス),HCV(C型肝炎ウイルス),HIV(ヒト免疫不全症候群ウイルス),HTLV-Ⅰ(ヒトT細胞性白血病ウイルス-Ⅰ),梅毒などの検査を実施しているほか,肝炎,結核,糖尿病,腎臓病,血液疾患,心臓疾患などの現症や既往症を問診し,輸血製剤の安全性確保に努めていることは周知のとおりである.
しかし,輸血後感染症は上記5種だけにとどまらず,さらに多くの疾患の伝播も危惧されており,その中には現在の検査システムではキャリアの把握が困難な疾患も少なくない.そこで,本稿ではわが国の国際化とともに熱帯地からの輸入症例が増加しているマラリアを中心とする熱帯病,さらに最近関心が高くなっているヒトパルボウイルスB19などによる輸血感染症について紹介してみたい.
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