輸血検査メモ
臓器移植とミクロキメリスム
久永 倫聖
1
,
中野 博重
1
1奈良県立医科大学第1外科学教室
pp.78
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903105
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キメラ(chimera)という言葉の語源はギリシャ神話に登場するライオンの頭,山羊の胴体,蛇の尾を持つ架空のモンスターのことである.生物学的には,遺伝的に異なる2つ以上の組織や細胞が共存している場合に用いられている.臓器移植とはまさに人為的にキメラを作製し,宿主内共存状態を存続させることを最終目標とする行為であるということができる.
1992年,Starzlらにより臨床肝および腎移植後,ドナー由来の遺伝子がレシピエントの末梢組織に存在することがpolymerase chain reaction(PCR)法により確認された1).すなわち,臓器あるいは細胞レベルのキメリスム(マクロキメリスム)に対し,遺伝子レベルでキメリスムの成立していることが明らかとなり,“ミクロキメリスム”という言葉で表現される新しい概念が提唱された.具体的にはレシピエント各組織(血液,リンパ腺,皮膚など)よりDNAを抽出し,性決定遺伝子(SRY gene),あるいはドナー型HLA-DRB 1遺伝子特異的プライマーを用いてPCRを行うことにより,105分の1レベルのキメリスムを解析することができる.これまでの抗体を用いたフローサイトメトリーの検出限界を103分の1とすると,約100倍に感度を上げることができたわけである.
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