輸血検査メモ
異型輸血の事例
吉岡 尚文
1
1秋田大学医学部法医学教室
pp.17
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903088
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ABO式血液型に起因する重篤な輸血副作用は何年かに1回は必ず大きく報道される.その都度,輸血医療現場の寒さやずさんさが指摘され,各施設では通達を出したり,院内の委員会などで改善やシステムのチェック,見直しを指示し,注意の徹底を図っている.しかし,何年かすると再び起こってしまう.
以前からいわれているように,この種の輸血過誤は輸血部や輸血検査室が関与していることはむしろまれで,多くは病棟や手術場での患者を間違えた輸血や輸血用血液の取り違えなど,不注意としか表現のしようがないことに起因している.しかし,よく調べてみると,表には出ないものの,ニアミスといわれるものはかなりの頻度で起こっていると考えなければならない.幸い輸血前に気がついた例,交差適合試験で型判定や型記入のミスが判明した例,あるいは間違えて輸血した患者が幸運にも偶然同じ型であったということは耳にする.これらのニアミスは検査技師の知識や技術の不足,患者の臨床情報の不足,看護婦あるいは医師の不注意が原因となっている.副作用発現までは至らなかったから良しとするのではなく,運良く難を逃れたニアミスを貴重な教訓として,常に病院や検査室の体制をチェックし,強化する努力が必要である.
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