境界領域
異型輸血の1例
新井 大作
1
,
一宮 勝也
1
,
牧野 総一郎
2
,
福本 義明
2
,
杉田 好朝
2
1東京医科歯科大学産婦人科
2東京医科歯科大学法医学
pp.639-641
発行日 1955年6月10日
Published Date 1955/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201209
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はしがき
今日,輸血は治療医学上ひろく用いられるようになつてきたが,これに伴つて副作用のある輸血例の報告も益々増加している。これらの多くは供血者と受血者がABO式血液型について同型であるのにかかわらず,術後に発熱発疹ないし血尿等が認められたという内容のもので,その原因はRh-Hr式血液型1)2)3)4)5)6)7)8)の不適合に基く場合とか,ことに米英諸国では他の新しい血液因子,例えば,K9),k, Sl0),s, Fya11),Fyb12),等による場合が知られている。しかしながら血液型学的には何等矛循もなく,その原因が不明のものも甚だ多い。従つて,輸血後おこる副作用ということは今後大いに研究を要する問題となってきた。ABO式血液型について同型ではなく異型の輸血13)14)15)16)が行われた場合は激しい副作用がみられるのは当然であつて,不幸な場合には,死の転帰をとるものすら決して稀ではない。従って,輸血に際し,型判定を誤らないことが絶対的に要求されるわけである。にもかかわらず,異型輸血例は事実において少くない。その原因としては,寒冷凝集反応に対する考慮が適切でなかった場合とか,陳旧な標準血清を使用したための誤認などのほか,殊に本邦では抗A血清及び抗B血清という名称の意味を逆に考えたための判定上の誤りが起りうるのであるが,遺憾なことと言わねばならない。
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