トピックス
プリオン病
宮本 勉
1
1長崎大学医学部細菌学教室
pp.1154-1156
発行日 1996年12月1日
Published Date 1996/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902952
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以前から伝播性海綿状脳症と称される疾患群があった.この疾患は脳の神経細胞が消失して空胞状の変性がみられ(図1),発症死亡した脳の乳剤を実験動物脳に接種すると,また発症し死亡するので伝播性があることからこの名前がついた.しかし一般の感染症の概念にはあてはまらない(後述).この病原(感染)因子がプリオン蛋白(prion protein;PrP)と考えられるようになり,最近はプリオン病といわれている.プリオン病は約200年前から知られていたヒツジのスクレイピーが有名で,最近話題の狂牛病もその1つである.ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease;CJD),ゲルストマン・ストロイスラー(Gerstmann-Sträus)症候群,致死性家族性不眠症などがあり,後二者は遺伝性疾患である.
プリオン病の病態は疾患によって多少の違いがあるが,共通点も多い.CJDを代表としてその特徴を示すと,まず極めて徐々に発症するので,いつ発症したかわからないことが多い.初めは運動失調(よく転んだり直進不能)が主であるが,不眠,健忘,性格変化が生じ,進行すると痴呆,幻覚が現れ,ミオクローヌス(頸や手足の屈曲発作)や病的反射を伴う.脳波は全誘導にわたってある間隔で同時放電がみられる.末期には植物人間となり,発症後1年前後で死亡する.
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