けんさアラカルト
最近の米国医療事情—医療保険と雇用制度の日米の違い
斉藤 邦明
1,2
1岐阜大学医学部臨床検査医学講座
2米国国立衛生研究所
pp.762
発行日 1995年9月1日
Published Date 1995/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902488
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米国では世界の最先端の医療が各方面で実施されているにもかかわらず,今日でも医療保険制度には大きな問題を抱えている.その問題とは,日本のように国民が基本的になんらかの健康保険制度に属して,診療報酬の一部負担でいつでもどこでも診療が受けられるという制度が米国にはまだできていないということである.すなわち,自分の働いている機関あるいは個人で保証内容も多少異なる保険会社の運営する医療保険に入会する制度になっており,国家による保険制度の統一は何もなされていないといっても過言ではない.もっといえば,保険に入れないような低所得層の人々は医療費が高すぎることもあって,適切な診療が受けられないこともある.さらにひどい場合は緊急医療が必要な場合でも診療に対する支払能力が証明されるか健康保険に加入しているかどちらかでないと受診を拒否されることすらある.
このように,米国は先進国でありながら医療保険制度についてはまさしく病める国家なのである.米国民も今の医療保険制度の状態で決して良いとは思っておらず,クリントン大統領が大統領選で当選を果たした際に米国民への公約の1つとして掲げた米国の医療保険制度の改革は多くの国民が期待していた.
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