話題
血小板由来成長因子(PDGF)
加治 和彦
1
1(財)東京都老人総合研究所アイソトープ部門
pp.274
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901967
- 有料閲覧
- 文献概要
血管平滑筋細胞は血漿では増殖刺激を受けないが,血清により細胞分裂を開始する.血清を調製する過程で血小板の凝集が起き,同時に血小板のα顆粒中にあるPDGFが放出される.これは,身体を循環する血液中にはPDGFは遊離されておらず,創傷部に局所的にこの因子が放出されることに相当する.細胞の増殖刺激はそれを必要とするところでのみ起きてほしいし,実際にそのように想定される.PDGFは創傷部に細胞を誘導し,続いてそれらの細胞の増殖を促し,傷を治癒する.
細胞成長因子(増殖因子)は古典的なホルモンとは異なって,近接した異種細胞間(パラクリン),あるいは同種細胞間(オートクリン)に働く蛋白性の分子言語である.この一群の分子は,細胞の生存維持,増殖促進,増殖阻害,機能発現,分化などのシグナルを細胞に伝達する.PDGFは先にその動態を示したように,最も典型的な成長因子である.細胞成長因子の分泌や,発現が異常になると障害が生じる.血管壁に障害があると,PDGFが異常に蓄積し平滑筋細胞の増殖を促し,動脈硬化症の原因となる.また発癌遺伝子,V-sisはPDGFのB鎖をコードしている遺伝子と相同であった.一方,PDGFは個体発生時にも重要な役割を演じていることがわかってきた.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.