増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅷ.感染症
3.ウイルス感染症の免疫検査
(2)レトロウイルス感染症(HIV,HTLV-Ⅰ)
吉原 なみ子
1
1国立予防衛生研究所エイズ研究センター
pp.286-288
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901971
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■レトロウイルスの免疫血清学的特徴
ヒトに感染し,病気を起こさせるレトロウイルスにはHIVおよびHTLV-Ⅰがある.HIVはAIDSの原因ウイルスであり,HTLV-ⅠはATLやHAMの原因ウイルスである.現在のところ感染後,AIDS発症までの潜伏期は平均約10年である.感染後20年でほぼ90%の感染者が発病すると推測されている.残念ながら発病後治癒した報告例は見当たらない.一方,ATLの潜伏期は数十年と長く,生涯発症率は300分の1である.発症後1年以内の死亡率が50%以上,2年以内で全例死亡する.これらのウイルスは感染すると抗体が作られる.この抗体は病気の回復を意味しない.ウイルスと抗体は共存し,一生この状態が続く.したがって,血液中の抗体を確認することによりウイルス分離とほぼ同等の診断価値を持つ.ただし抗体検査はウイルスや遺伝子を直接検出していないことおよび発症までの潜伏期が長いことなどを考慮して,この検査の結果のみから診断することは適切ではない.そのため,診断する場合は病歴や生活歴,身体的所見および検査所見などを総合して判断する必要がある.
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