増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅰ.ホルモン
5.性腺ホルモン
(1)hCG,β-hCG
盛本 太郎
1
,
齋藤 裕
1
1昭和大学医学部産科婦人科学教室
pp.137-139
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901913
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin;hCG)は妊娠の成立により絨毛組織より産生される性腺刺激ホルモンであり,卵巣中の妊娠黄体からプロゲステロンをはじめとしたステロイドホルモン分泌を刺激することにより妊娠維持に重要な生理作用を果たしていると考えられている.hCGは妊娠初期より母体尿中に排出されるため,日常臨床の場においては妊娠診断に最も一般的に用いられるが,そのほかにも,流産,子宮外妊娠における補助診断,絨毛性疾患の管理における指標として測定が行われている.また,近年では絨毛性疾患以外の悪性腫瘍のマーカーとしても注目されている.
hCGは分子量約38,000の糖蛋白であり,αサブユニットとβサブユニットから成る.αサブユニットは89〜92個のアミノ酸残基から成り,下垂体前葉から分泌されるLH(黄体化ホルモン),FSH(卵胞刺激ホルモン),TSH(甲状腺刺激ホルモン)とほぼ同等のアミノ酸配列を有する.βサブユニットは139〜145個のアミノ酸残基から成るが,そのアミノ酸配列はFSH,TSHのものとはかなり異なるもののLHのβサブユニットのアミノ酸配列と相同性が認められ,わずかに,C末端から28〜38個のアミノ酸から成るペプチド(β-CTP)およびN末端から38-57残基付近(β-コア部分=βCF)がhCGに特異な抗原性を有している1,2).
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.