技術講座 生化学
hCGおよびhCG-βの測定法
伊藤 節子
1
,
内田 侊子
1
,
加野 象次郎
1
1慶応大学病院中央臨床検査部
pp.799-804
発行日 1984年9月1日
Published Date 1984/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203134
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の測定は,妊娠の診断と経過観察,絨毛性疾患の術後管理や治療効果の判定に極めて重要です.hCGは分子量約38,000の糖蛋白で,αおよびβ-サブユニットから構成されています.hCG分子のα-サブユニット(hCG-α)のアミノ酸配列は黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH),甲状腺刺激ホルモン(TSH)などそれぞれの分子のα-サブユニットとよく似ています.またhCG分子のβ-サブユニット(hCG-β)のアミノ酸配列は,LH分子のβ-サブユニットと似ています.hCGに固有の構造は,hCG-βのC末端側約30個のアミノ酸配列にあるとされています.
このようにhCGとLHのアミノ酸配列はよく似ているので,免疫学的測定を行うとき,hCGやLHの特異抗体を作製することが難しいのです.そのため,微量のhCGをLHと鑑別することが非常に困難となります.そこでこの問題を解決するために,hCG-βを用いてその抗体を作製し,LHとの交差性による偽のhCG値を示すような現象を除きました.しかし,疾患によっては血中にhCGとhCG-βが共存するため,hCG-β抗体を用いてのhCG測定にも問題が出てきました.この測定系ではhCG-βが存在すると真の値より高く出ます.そこで,hCG測定系とhCG-β測定系との交差性を利用して,計算式を作成し,hCGとhCG-βの分別定量を行いました.もちろんhCG,hCG-βの特異抗体があれば,こんな面倒な考えはしなくてもよいわけです.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.