トピックス
増殖因子とその受容体の免疫組織化学
福里 利夫
1
,
河原田 ウメ子
2
1群馬大学医学部附属病院病理部
2群馬大学医療技術短期大学部衛生技術学科
pp.945-947
発行日 1993年10月1日
Published Date 1993/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901713
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細胞の増殖を促す物質である増殖因子や,その受容体(レセプター:増殖因子と結合し,その作用発現を導く物質)がどのような組織のどの細胞で作られているかを観察することは,それらの作用や役割を明らかにするうえで大変重要である1).その際,威力を発揮するのは組織切片を用いた病理形態学的観察である.組織全体を丸ごと調べる生化学的方法では,組織を構成する個々の細胞や構造物について語ることは難しい.実際,そのような形態学的観察法には,それらの増殖因子や受容体に対する抗体を用いて組織を染色する方法と,組織や細胞内のmRNAを調べる方法がある.前者の方法では,主に免疫組織化学的方法を用いる.後者は核酸分子の間の反応を用いたin situハイブリダイゼーション法であるが,その場合,放射性同位元素を利用する方法と,放射性同位元素を使わず免疫組織化学的方法と組み合わせて行う方法がある.免疫組織化学では免疫反応(抗原抗体反応)を用いて組織切片あるいは細胞内の分子の有無あるいは存在部位を形態学的に観察する.最近の免疫組織化学の進歩は著しく,簡便で感度の良い方法が見いだされ,比較的安定した技術となっている.
ホルモンと異なり増殖因子は血中に出て遠く離れた臓器や組織に作用することは少なく,むしろ近接した細胞や分泌細胞自身に作用することが多い.ゆえにその局在部位の同定がその作用の解明に手がかりを与えてくれることがある.
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