特集 受容体1997
Ⅲ.酵素活性内蔵型受容体
1.プロテインキナーゼ
1)チロシンキナーゼ
神経栄養因子受容体
岡澤 均
1
,
金澤 一郎
1
Hitoshi Okazawa
1
,
Ichiro Kanazawa
1
1東京大学医学部神経内科
pp.495-498
発行日 1997年10月15日
Published Date 1997/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901259
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神経栄養因子として最も歴史の古いnerve growth factor(NGF)は,交感神経節神経細胞に対する生存維持効果を指標に,唾液腺から精製分離された分子量約13300,等電点9.3の蛋白質である。NGFに遅れてブタの脳から分離されたbrain derived neurotrophic factor1)がアミノ酸配列上でNGFと相同性が高いことがわかり,分子ファミリーの存在が明らかになった。当時開発されたPCRクローニングを用いて多くのグループがNGFファミリーに属する新規栄養因子の単離を試み,neurotrophin 3(NT3),NT4/5,NT6の存在が明らかになった。現時点では魚類のみに見出されるNT6を除いて,他のneurotrophinは両生類,哺乳類など種を超えて保存されている。NGFは三つの分子内S-S結合と四つのβ-sheet構造が基本骨格を形成することが今日までに知られている2)。neurotrophinはいずれもNGFと同様な三次構造を持ち,β-sheet構造をつなぐループの部分において各々のneurotrophinに特異的なアミノ酸配列が分子表面に突出している。この部分が,後述するように各種受容体との特異的結合を規定していると考えられる。実際この部分を人工的に変異させると,受容体の選択性を変えることができる3)。
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