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は じ め に
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)とは,胚発生,血管新生,創傷治癒などさまざまな生命現象に関係する成長因子の一種である1).ヒトではFGF1~FGF23(ヒトではFGF15は存在しない)の22種類のFGFが同定され,そのすべてが構造類似性をもつシグナリング分子(リガンド)として知られている(図1a).FGF1~FGF10はFGF受容体(FGF receptor:FGFR)に結合し,そのシグナルが細胞内に伝達されている.FGF11~FGF14は非分泌性因子として細胞内に局在し,FGF受容体を介さず,電位依存性ナトリウムチャネルの機能を制御する.FGF16~FGF23は比較的最近発見され,未知な部分が多い.FGF19,FGF21,FGF23はそれ以外のFGFと異なり,細胞膜上に存在するヘパラン硫酸への結合が弱いため,局所の働きではなく血流にのって全身への作用を示すことが知られている.各FGFリガンドはそのアミノ酸配列からサブファミリーを構成し,サブファミリー内でその機能を保存されていると考えられているが,22種類すべての生体内での役割が解明されているわけではない.
FGF受容体は一回膜貫通型の受容体で,FGFリガンドが結合すると二量体となり細胞内にあるチロシンキナーゼ活性を利用して自己リン酸化が誘導される.その後,細胞内のキナーゼ(PLCγ/PKC,STAT1/p21,PI3K/Akt,Ras/ERK1/2など)を使った複数の伝達経路でFGFリガンドの情報を細胞内に伝達している(図1b).FGF受容体は4つの遺伝子FGFR1-4から転写されている.FGFR1,2,3遺伝子から転写されるmRNAはさらにいくつかのアイソフォーム(単一の遺伝子から転写されたmRNAであるがスプライシングの有無により異なるRNA配列をもつもの)があり,実際にはアミノ酸配列が異なる受容体が4種以上発現している.FGFリガンドと受容体の組み合わせにより結合能が異なり,それにしたがって下流のシグナル伝達経路の活性化能が異なってくることが知られている.
以上のことから,どのFGF因子が発現・分泌され,どのFGF受容体がそれを受け取り下流のシグナル伝達経路を活性化するのかは,組織や細胞ごとに異なっていると予想されている.このことから現在も生体内の組織におけるFGFリガンドとFGF受容体の機能解析が,ノックアウトマウス,コンディショナルノックアウトマウス,変異型蛋白質の過剰発現マウスなどを用いてすすめられている.
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