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1型インシュリン様成長因子受容体(IGF-1R)およびそのアゴニストである1型インシュリン様成長因子(IGF-1)は,神経細胞の発達,分化,生存などに広く関与する。IGF-1Rの発現は神経幹細胞を含む脳の殆どの神経細胞で見られる。一方,IGF-1の発現も脳全体に広く見られるが,そのレベルや分布は発達段階により大きく変化する。IGF-1Rは,細胞外に位置しIGF-Ⅰと結合するαサブユニットと,膜貫通領域および細胞質内のチロシンキナーゼドメインを有するβサブユニットより成るヘテロ4量体である。IGF-1がIGF-1Rのαサブユニットに結合すると,βサブユニットのチロシンキナーゼ領域内のTyrがトランス型の自己リン酸化反応によりリン酸化される。βサブユニットの自己リン酸化に引き続き,インシュリン受容体基質1(IRS-1)のTyrがリン酸化され,PIP3産生の促進やMAPキナーゼの活性化が起こる。IGF-1Rは2型インシュリン様成長因子(IGF-2)およびインシュリンにも,IGF-1の1/5~1/2,および1/1000~1/100程度の結合性を示す。
上述のように,IGF-Ⅰ発現のレベル・部位が発生段階に伴い大きく変化することから,IGF-1Rは基本的には自己分泌(autocrine)または傍分泌(paracrine)されたアゴニストと結合すると考えられる。しかし,IGF-Ⅰは血液脳関門を通過するとされており,IGF-1レベルが血中よりも脳内の方が低い時には,循環性のIGF-1が脳に影響を与える可能性も示唆されている。IGF-1/IGF-1Rシグナルの「神経細胞」の発達・分化・生存などへの作用について多数の報告がある一方で,「シナプス」に対する影響に関しては比較的報告は少ない。そこで,本稿ではIGF-1/IGF-1Rシグナルのシナプスに対する作用について触れたい。
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