増刊号 臨床化学実践マニュアル
II.日常検査における異常値への対応
2.蛋白質成分
(7)心筋(関連蛋白)
片山 善章
1
1国立循環器病センター臨床検査部
pp.82-85
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901494
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はじめに
急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)時に血中に遊出する特異性の高い蛋白は,心筋細胞質に存在するCK-MB(分子量:約81 kd),AST(分子量:約90kd),LD1(分子量:約140kd)などの酵素蛋白とミオグロビン(myoglobin;Mb,分子量:17.5kd)および細胞質中に約6%が遊離形で存在しているトロポニンT(troponin T:TnT,分子量:37kd)が挙げられる.一方,心筋の筋収縮に関与する構造蛋白としてはミオシン軽鎖I(myosin L chain kinase I;Ms-L I,分子量:28kd)とTnTがある.特にAMI時の血中TnTは細胞質画分と構造蛋白の両者から遊出すると報告1)されている.その意味からMbは分子量が17.5kdであるためCK-MBよりも早期に血中に出現し,細胞質画分に存在するTnTも37kdであるからCK-MBよりも早期に出現する,筋収縮蛋白として機能しているTnTは構造蛋白から崩壊すると徐々に出現するのである.したがってAMI時の血中TnTは細胞質酵素蛋白のCKや構造蛋白のMs-L Iの両者の利点を持つと考えれば理解しやすい.Ms-L Iは分子量28kdであるが,構造蛋白であるので心筋蛋白のうち一番遅れて血中に出現するのである.
本稿では心筋蛋白のMb,Ms-L I,TnTについて述べる.
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