増刊号 尿検査法
II.各論
12.有機酸
(1)ピルビン酸
戸谷 誠之
1
1国立健康・栄養研究所母子健康・栄養部
pp.142-143
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901097
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はじめに
ピルビン酸(pyrvic acid,CH3-CO・COOH)はα-ケト酸のひとつであり,図に示すように糖代謝や数種のアミノ酸代謝路の交差点に位置する主要な中間代謝産物である.特に,解糖系にあってはその最終産物である乳酸の前駆体であり,このことからも明らかなように,生体代謝の指標として以下に述べるように重要な役割を果たしている1).
乳酸とピルビン酸の血中濃度比はほぼ10:1に保たれている.この比率に乱れを生じさせる原因には,①NADH:NAD比は一定であるがピルビン酸の量が急増する場合,②NADH:NAD比は増大するがピルビン酸量は変動しない場合,③NADH:NAD比とピルビン酸量のいずれもが変動する場合,がある.①に示す病態には重症の糖尿病や尿毒症,解糖系の酵素欠損症の一部(例えば,ピルビン酸脱水素酵素欠損症)がある.大量出血やショックなどの急性の循環不全,および呼吸不全による組織の低酸素状態から示される乳酸アシドーシスの状況下では上述の②または③の状態となり尿中ピルビン酸値の著変はない.このように尿中のピルビン酸に影響が現れるのは①の場合であり,②,③の場合は大きな変動を示さない.
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