トピックス
インスリンレセプター異常症
牧野 英一
1
1千葉大学医学部第二内科
pp.1081-1082
発行日 1990年7月1日
Published Date 1990/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900327
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インスリンはグルコース代謝のみならず,蛋白質,脂質代謝にも必要であり,その不足により糖尿病が起こる.インスリンは細胞膜表面のインスリンレセプタターに結合し,グルコースの取り込みなどのインスリン作用を発揮する.インスリンレセプターは分子量135,000のαサブユニットと95,000のβサブユニットの四量体(α2β2)として存在し,αサブユニットにインスリンが結合するとβサブユニットのチロシンキナーゼ(蛋白質のチロシンをリン酸化する酵素)が活性化され,インスリン作用が伝達されると信じられている.最近インスリンレセプターcDNAがクローニングされ,さらにそのプロモーター領域および遺伝子構造も明らかにされ,インスリンレセプターの遺伝子レベルでの検索が可能となった.
インスリンレセプターの異常により,インスリン作用が伝わらず,インスリン抵抗性糖尿病が起こる.これは著しいインスリン抵抗性と高インスリン血症および黒色表皮腫(皮膚の黒色化)を呈する症候群で,先天的にインスリンレセプターの減少するタイプAと,自己免疫疾患に伴ったインスリン受容体抗体によるタイプBに分類される.さらに,このタイプAの亜型として,インスリン結合の低下のみられないタイプCが見いだされた.これらの先天性インスリンレセプター異常症で,その遺伝子レベルでの異常が明らかにされたのは9例にすぎない.
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